語り手・絵本コーディネーター こがようこ がお届けしています
HOME今月読みたくなっちゃった絵本か〜こ>狐
Summer Santa Claus
HOMESummer Santa Clausプロフィールお仕事お仕事活動今月読みたくなっちゃった絵本雑記雑記(ざっくざっく)Koさんち問い合わせ
狐

今月読みたくなっちゃった絵本 あ〜お今月読みたくなっちゃった絵本 さ〜そ今月読みたくなっちゃった絵本 な〜の今月読みたくなっちゃった絵本 ま〜も今月読みたくなっちゃった絵本 ら〜ろ 今月読みたくなっちゃった絵本 か〜こ今月読みたくなっちゃった絵本 た〜と今月読みたくなっちゃった絵本 は〜ほ今月読みたくなっちゃった絵本 や〜よ今月読みたくなっちゃった絵本 わ〜ん
偕成社
新美南吉 作 
長野ヒデ子 絵
 

◆新美南吉晩年の作
『ごん狐』『てぶくろを買いに』などの作者、児童文学者の新美南吉さんの作品です。
新美南吉さんは、1943年に29才という若さで他界されています。『狐』は最晩年の作なのだそうですね。
この作品に、長野ヒデ子さんが絵をつけられ、絵本として出版されたのが1999年。わたしにとってはつい最近出版されたような気持ちでいましたが、もう10年もたつのですね。
この絵本の原画展の折、買わせていただき、毎夜のように泣きながら当時小学生だった娘に読んだ絵本です。

◆お祭りの晩に
『月夜に七人の子供が歩いておりました』(本文抜粋)
美しい書き出しです。冒頭からすっと、物語の世界に入ってしまう。
村の子どもたちは半里の道を歩いてお祭りにでかけます。途中でそのひとり、文六ちゃんの下駄を買って。
ところが、下駄屋さんでよそのおばあさんに、夜下駄をおろすと狐がつく、と言われるのです。
下駄屋のおばさんは狐のつかないよう、まじないをかけてくれますが、文六ちゃんも、ほかの子どもたちも、どんどんどんどん、その思いで心がいっぱいになっていきます。
文六ちゃんに狐がつく。文六ちゃんに狐がついていたらどうしよう。もうついているかもしれない。文六ちゃんは狐だ。
祭りの間も、帰る道すがらも、子どもたちも、文六ちゃん自身も、その思いで心がいっぱいになっていく。
月だけが夜道を照らし、子どもたちの影をおとしています。今のこの明るい夜しか知らない子どもたちには、なかなか想像できない世界かもしれません。

◆全身全霊で子どもを想う・・・ということ
さて、お話しはここから。
家に帰った文六ちゃんは、添い寝するおかあさんにその思いをぶつけます。そこから、二人の会話で物語は延々と続いていくのです。
想像の中、狐となった文六ちゃんと、文六ちゃんを思うおかあさんの情愛が、会話の形で続いていきます。
これでもかっていうくらい、文六ちゃんのおかあさんは布団の中、想像の世界で自分をおとしめ、なにがあっても、全身全霊で狐の文六ちゃんを守ると語り続けます。

◆おかあさんに読んで欲しい
わたしは今こそ、現代に生きるおかあさんたちにこそ、この絵本を声に出して読んでほしいと願います。
読んでもらった子どもたちは、これだけ自分は思われている、望まれた子どもであると感じるはずです。
そして、おかあさんにとっても、自分もまた文六ちゃんのおかあさんと同じ思いで、子どもを産み育てたと思い起こすことができるでしょう。
そんな確認をさせてくれる絵本です。
自分自身が雪山に追いやられた狐の親となって物語に入りこみ、自分もまた全身全霊でわが子を守る親のひとりであることを確信することができるでしょう。

◆十年のときを超えて
10年前、娘はこの絵本が嫌いでした。だって、わたしがこの絵本を読んではその度に泣くのですもの。おかあさんが泣くなんてイヤでしょう?
その娘が今年二十才。なるほど、10年の歳月がたったわけです。今の彼女でもこの絵本を読んでほしいとは言わないかもしれません。
でも、自分も文六ちゃんと同じように、愛されていたという確信を持って、大人になってくれているとわたしは信じています。
    
(2010年9月掲載)
     
 




Copyright(C)2007 Summer Santa Clsus All Rights Reserved.