◆がんばる!
たまごにいちゃんは、にいちゃんですからね、がんばらなくっちゃいけません。
でも、本当はがんばりきれなくって、たまごに戻ってしまいたいときだってある!!
わたしはにいちゃんじゃないですけど、やっぱり、たまごに戻ってしまいたいときもある!
「がんばれ!」ってことばは好きではありませんが、「がんばる!」は案外いいことばなんだなあと…感じさせてくれる絵本です。
◆◆小学校の高学年のときに流行っていたお誕生会◆◆
それはそれはブルジョアなお誕生会でした。
仲のいい数人の友だちにこっそり招待状を渡します。
フフ、これ内緒よ、なーんてね。
サンドイッチにケーキ、とっておきのワンピース、髪の毛には大きなリボンをつけてもらう。
お呼ばれされた方もプレゼント抱えて、おんなじようにワンピースにリボン、お行儀よくやってきます。
「わあ、そのリボンかわいい」
「パパの出張のおみやげなの、ゥフン」
なーんて言って。いやあな娘たちでしょ?
さて、そのブルジョアなお誕生会に植前君は突然やってきました。小さな妹を連れて。
転校生の植前君は色が黒くて、いつも、ほっぺたが真っ赤だった。
おとうさんもおかあさんも働いてらして、学校ではスポーツ万能男気いっぱいの彼も、家に帰ると、小さな妹といつも一緒でした。
母が声をかけたのか、噂を聞いてやってきちゃったのか、妹とふたり部屋にあがって、所在なさ気にしていた。
わたしたちだって、いつもなら、も少しくらいは優しくできたんだろうけど、ほら、なんといっても今日だけはセレブな集まり、まあ、お姫様ごっこみたいなもんですからね。いやあねえ、男ってデリカシーなくて…、なんて植前君も妹も鼻にもかけず、わたしたちはお誕生会を続行。
「そろそろ、帰る」
しばらくして、植前君は妹の手をひいて帰っていきました。
やったわ、これで本来のお誕生会スタートね。
で、帰りぎわ、玄関まで見送ったわたしに、植前君はポケットから折紙で包んだプレゼントをくれました。
リボンできちんと結ばれたグシャグシャの折紙の包み。
着飾った娘たちは、その日だけのブルジョアお誕生会を堪能し、では、ごきげんよう、夕焼けといっしょにさよならしました。
みんなの前では出せなかったプレゼント。
お風呂からあがって開いてみると、ビー玉がころん…転がりました。
(2005年9月掲載)
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