◆控えめな絵本
ひらやまかずこさんの絵が楚々としていて美しい。
「おかあさんのひざぶんこ」というシリーズ名も心から頷けます。
とても、控えめな本です。図書館の片隅にあったら見過ごしてしまいそうな本です。
花壇の片すみで、ぽっぽっぽっぽっと花が咲いているような本なんです。
けれど、本を開いてみてください。ひとまわりしてめぐって来たこの季節、春がどんなにうれしくって、くすぐったくて、あったかいかを、すぐに思い出すことができますよ。
みんなが心待ちにしていた春。
はなも、はなあぶも、ありも、すずめも…、それから、おつんべこ(正座で座る)の子どもたちも!
待ちに待っていた春はもう、そこまで来ています。
◆◆おつんべこ◆◆
小さな子どもがチョンと正座することがあるでしょう?そんなうしろ姿を眺めると、おつんべこということばを思いだします。
頭の下にキュッとしまった首根っこ。ここは『ぼんのくぼ』と呼びますね。
手はチョンとひざの上にのっかって。この姿こそ、わたしにとっての『おつんべこ』。
お話会でも最前列の子どもたちは、おつんべこで座っています。
足出していいんだよ。疲れない?と聞くけれど、なぜか、子どもはお話に聞き入れば聞き入るほど、おつんべこ。
わたしはお話をするお当番でないときには、おかあさんたちの中に紛れて、後ろからかわいいおつんべこを眺めます。
おかあさんのおひざに張付いて離れられなかった子どもたちが、季節をひとまわりして、今じゃ最前列でおつんべこ。
「春になったら、幼稚園に行くんだよ」
おつんべこの背中が語りかけているようで、この季節になると、うれしいような、ちょっと淋しいような気持ちになります。
(2004年3月掲載)