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童心社
あべ弘士 さく
 
 

◆美しい鳥図鑑のようでもありますが…
鳥の絵と、詩のような短いことばで綴られた絵本です。

巻末には、それぞれの鳥の名前と説明がついていて、美しい鳥図鑑のようでもありますが…、
いえいえ、それにはとどまらない!

◆鳥それぞれの赤
鳥はそれぞれ、体の一部に赤をぬっています。
この絵本の鳥たちは、その一点の赤から、冬の冷たさや、鳥たちのせつなさ、あるいはその鳥を見守るあべ弘士さんのせつなさ)まで、強く語りかけてくるのです。

鳥の絵本でありながら、冬を語っている絵本。

◆動物を知りつくす
あべ弘士さんは旭川市旭山動物園の飼育係を25年勤められました。

ああ、この人は鳥を、動物を「知ってる」と、いつも思います。
それは生態とか習性とかだけでなく、鳥まるごとをしってる、という感じ。
赤の深さや、まぶしさが、それを物語っています。

画家として、絵本作家として、だじゃれの天才(!?)としての、あべ弘士さんも大好きですが、わたしは『絵で詩を描く』あべ弘士さんが一番好きです。

 

◆◆子どものころの大晦日の過ごし方◆◆
とてもとても忙しかった。
人もお家も、町全体が、もうすぐ明ける新しい年に向かってパタパタとせわしなく動いていた。

母の弟子のようになって、パタパタと手伝い、パタパタと買物に行かされた。
「あ、忘れてた。もう、一回行ってきて」
坂の下の小さな商店街に向かって、パタパタと走り、同じように走り回るクラスメートを見かけたりして…。

とてもとても忙しく、その一方で、町全体のパタパタ感を楽しんで、白い息をパタパタと飛ばしていた。

買物も掃除も、今よりずっと大仕事で、けれど、お正月さんがちゃんと残っていた時代。

夕方、やっとこ解放されると、わたしは再びパタパタ坂を下りて、商店街の中にある本屋さんへ出かけた。『本屋さん』っていっても、文房具と一緒に、ひと棚、文庫本が並んでいるだけの小さなお店。

そこで、月刊のマンガ雑誌『りぼん』を買う。
それから文庫本を一冊。
本屋さんの袋のにおいが好きだった。

本屋さんの袋は薄っぺらな封筒型。
ギザギザになってる折り返し部分をペタンとセロテープでとめてもらう。
わたしのことなど知ってもいないだろう店のおじさんに、今年もほんとにお世話になりましたねえ、とペコリと頭を下げる。イッパシのおとなの気分。

年の瀬の街をパタパタと走って家に帰る。
信号を待ちながら、本屋さんの袋のにおいをもう一度、すーっと吸い込む。
冷たい息がこぼれる。

一年のおしまいのお天とさんが、空の端っこを赤く染めていた。
(2005年1月掲載)

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