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おかあさんとわたし

おかあさんとわたし

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大和書房
k.m.p.
ムラマツ エリコ
なかがわ みどり

◆記憶の断片
ときどき甦る子ども時代の記憶の断片。
そのほとんどは、あそこに行った、こんなことしたっていう、脳のヒダヒダに刻み込まれた、思い出としての記憶ではなくて、心臓がドクドクいったり、手のひらが熱くなったりするような体の一部が覚えている感触の記憶です。

◆イラストレーターk・m・p
k.m.p.さんのポストカードシリーズから作られた『おかあさんとあたし』には、記憶を呼び起こす瞬間がたくさん詰っています。

「おかあさん」と「ちいさなあたし」の何気ない日常の出来事がイラストで綴れ、そのひとこまひとこまの積み重ねが懐かしい時代を呼び覚ますのです。

迷子になってどうしようもなく不安になった胸の内や、泣きじゃくって息吸い込む度、胸がヒュウヒュウ音立てた、そのせつなさまで体に甦ってきます。

◆ものを感じていた時代
子ども時代、わたしはとてもちっぽけな世界にいたけれど、今よりずっと、ものを感じていたのかもしれません。五感をビリビリ震わせて、体中で生きていた時代。

そして、そこにはいつも、わたしを見守る「おかあさん」という存在があったことをも、この本が語りかけてくれているのです。

◆◆ とてもとても、小さかったときの記憶◆◆

家の裏の坂道を、母と手をつないで歩いている。

母の爪には透明のマニキュアが塗られていて、わたしはそれが珍しくって、親指でマニキュアをコリコリなでた。

よく、見ようと顔を近づけると、母の手からはツン、ときついにおいがする。(今ならキッチンハイターのにおいだって、ちゃんとわかるけれど…)

嫌なにおいじゃない。おかあさんのにおい。でも、何度もクンクン鼻を近づけて、「くさい、くさい」と言った。

それから、つないだ手をグルングルン揺すぶった。

…あのときわたしは、とてもとてもうれしかったんだ。ちゃんと覚えている。どこに行った帰りだったのだろう。それはもう、わからない。

でも、うれしかったって覚えている。くさいくさい、って言いながら…、でも、うれしくって、うれしくって…、

じっとしていられなくって、両方の手で母の手を、グルングルン回したんだ。

わたしの手のひらが覚えている、うれしかった記憶。
(2004年5月掲載)


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