◆1/2(2分の1)成人によせて
ゆんは生まれた時「オンギャー」と、産声をあげませんでした。ママの顔も見ないまま、集中治療室というお医者さんしか入れない部屋で、三日間たくさんの検査を受けたり、治療を受けました。
ママはゆんに一度も会うことができなかったし、難しいお医者さんの説明も分からなくていっぱい泣きました。お医者さんが二日目に保育器の中のゆんの写真を撮ってくれたけれど、あんなに会いたかったゆんは、目が離れてて、口が大きくて、宇宙人みたい。パパもおばあちゃんも、まるでずっと前からの知り合いのように可愛い可愛いと言うけれど、ママはなんだか知らない人を手渡されたようで、この子を可愛がっていけるのかしらと、心配になったのを覚えています。でもそれは、おかあさんになったばかりの人が経験する心の病気なんですって。すぐ良くなるよと、お医者さんが教えてくれました。
元気になって退院すると、お医者さんに言われたとおり、ママはゆんが大好きになって、いつでも一緒にいるようになりました。
「1/2成人」おめでとうございます。もう10才という気もするし、まだ10才という気もします。でも、考えてみたらママもおかあさんになって、まだ10年しかたっていないということですから、失敗したり、ゆんと同じように、ドキドキしたり、悩んだりして大きくなってます。
ゆんの優しさは、誰がなんと言おうとママが一番よく知っているはずなのに、ほかの子が大人びてくるのをみると、つい、しっかりしなさいと、言ってしまう。そんな時、ゆんは本当にせつなそうな顔するよね。いずれ、大人になっちゃうんだから、楽しみながらゆっくり大きくなりましょう。「そんなこと私のほうがわかってる。」と言われそうだけれど、ママが忘れていたら後押ししてくださいね。元気に一緒に「成人」を迎えましょう。
そうそう、この前ママの友だちが、美人なおねえちゃんだねと、ゆんを褒めてくれました。宇宙人みたいだったゆんが、10年で美人になっちゃうんだから、あと10年したら、どんなすごい美人になっちゃうのかママは怖い! H 10.2.3.
◆上の娘が10才になったとき
学校で「2分の1成人」のお祝いをしてくれました。
子どもたちは自分の歴史をひも解いて、成人の半分になったことを学習し、親子で記念の文集を作ってお祝いしたのです。当時の担任の先生に、おかあさんたちも子どもに手紙を書いて文集に載せましょう、と明るく言われ、子どもと同じように「イヤン、恥ずかしい」と叫びつつ我が子への手紙を書いたのでした。
そこで生まれたときのことを思い出しているうちに、母親としての自分がそのときに生まれたことに気付いたのです。なあんだ、何でも知っているような顔で怒っているけど、わたしだってあの娘と同い年じゃない、って。
あの夏の日、わたしも生まれたてのおかあさんで、異国の病室で娘と変わらずビービー泣いていたのです。ほんの14年前のことでした。
◆『おかあさんがおかあさんになった日』
「あなたのおかげで、わたしはおかさんになれたのよ。わたしのあかちゃん ありがとう。」これは、『おかあさんが おかあさんになった日』という絵本を介して、長野ヒデ子さんが伝えてくれたメッセージです。
時には立ち止まって、わたしもおかあさんになれたことの喜びをかみしめたいと思います。
(2002年1月掲載)