*かっぱにご注意!
子どものころの通学路の途中に『いの池』がありました。
平仮名の「い」の形をした『いの池』。
この池には立て札が立っていました。
「かっぱにご注意!」なんともソソラレル立て札でしょう!?
昼間でもどんより、じっとりしたその一帯に、子どものわたしは足を踏み入れることはしませんでした。
でもね、その一方で、中学生になっても、高校生になっても、ときどきそっと、その立て札を見に行ったのを覚えています。
「立て札あるある。何かいるいるってね」
うれしくもあり、そのくせ、ちょっとゾクゾクッとして…、その朽ちた立て札が好きだったのでしょうね。
あるとき、立て札はなくなっていましたね。
立て札ひとつ無くなっただけなのに、わたひにとっては、もう、ゾクゾクもワクワクもなくなりましたね。
立て札と一緒に、河童もどこかへ消えました。
*さて、『おっきょちゃんとかっぱ』のはなし…
おっきょちゃんは、かっぱのガータロと友だちになって、水の世界で楽しく過ごします。
水の外の世界に戻れて、おかあさんとも再会できるのです。
でもね、
この絵本を読むとせつなくなります。
おっきょちゃんはガータロにもらった祭りのもちを
「ひとくちたべたら おとうさんのことを ふたくちたべたら おかあさんのことを」
忘れてしまいます。
逆に外の世界に帰ってきたおっきょちゃんは、川の中のことをひとつも覚えていないのです。
わたしたちの世界と水の世界、わかりあえても決して合い入れることのできない世界、それがドキドキやワクワク…せつな差を呼ぶのかもしれません。
(2000年8月掲載)